Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

2020-01-01から1年間の記事一覧

「闇が滲む朝に」🐑 章 第24回「二人の逃避行 近くに竜が住んでた湖があっから」

早一番のお客さんですけ? 徹は「もとずろう温泉旅館」のお湯に浸かりながら、大きく深呼吸した。どこからか静かにお湯が流れる音が聞こえてくる。「朝早一番のお客さんですけ」 後方から野太い声が聞こえてくる。 「お客さんけ?」 徹は二度目の問いかけに…

「闇が滲む朝に」🐑 章 第23回「二人の逃避行 お湯に浸かり自分が自分でないような」

カーテンを開けると木々一色だった「温泉に入りたかったら入ってもいいけど、どうする?しばらく休む?」 徹は、「もとずろう温泉」の女将・いちこと社長のずんいちろに挨拶した後で、はなえに聞いた。「そうだね。午前中はね」 はなえはゆっくりと返事した…

「闇が滲む朝に」🐑章 第22回「二人の逃避行 温泉だけでなく、のど自慢にも出てみっか」

もとずろう温泉に到着 徹たちはタクシーを降りると、どこからか川のせせらぎが聞こえてきた。新鮮な空気に凛と身体が包まれた。はなえが気持ちよさそうに深呼吸した。 目の前に小さな温泉宿が建っている。古びた木造りの看板に「もとずろう温泉旅館」と大き…

「闇が滲む朝に」🐑章 第21回「二人の逃避行 行き先は、あの『もとずろう温泉』」

さあ着いたよ。尾花だよ コーヒーを飲み終わった後で徹とはなえはトイレに寄り、駅のホームで電車を待った。 やがて「もとずろう温泉」のある尾花駅行きの電車が予定通りに来た。 二人は電車に乗ると座席に座り目を閉じた。話していると冗談を言うはなえだが…

「闇が滲む朝に」🐑章 第20回「二人の逃避行 あったかいコーシーを飲みながら」

あんた、コーシーは好きなの 土曜日早朝のコーヒーショップに客はほとんどいない。軽音楽が店内を華やかな雰囲気にしている。「おまちどうさま」 徹ははなえと自分のコーヒーをトレーに乗せて運んできた。「温泉は午前10時過ぎから入れるようだから。着く頃…

「闇が滲む朝に」🐏章 第19回「二人の逃避行 ちみの瞳に恋してるってか!?」

秘めた二人の逃避行? 「この前に外出したのはいつだったかねえ。夏ごろだったかなあ」 はなえがタクシーの窓の外を眺める。「8月頃・・・・?」「そうだね。確か・・・・」 タクシーが信号待ちで停車した。「確か息子夫婦と食事したんだね・・・・」 再び…

「闇が滲む朝に」🐑章 第18回「二人の逃避行~それでも見つかるわけにはいかない」

土曜日、「ラッキー園」の近くで 結局、その日、徹はスーパーでは妻の多恵子には会わずに自宅に戻った。マイ子にも妻に会いに来たとはいえず、夕方のレジ打ちで忙しい多恵子に会ったところで迷惑な顔をされるだけだと思ったのだ。マイ子と別れ仕方がなくスー…

「闇が滲む朝に」🐑章 第17回「えっ?スーパーで偶然に会った人が」

夕方のスーパーで発見 徹の妻・多恵子が働くスーパー「モリダクサン」は1階が食品売り場で2階には衣類や日用雑貨を中心に販売している。店舗によって面積や形態も違うスーパーだが、「モリダクサン」は大型の物とは違い食品に特化した店舗だ。 だから平日…

「闇が滲む朝に」🐑章 第16回「一日、一日を精一杯に生きるということ」

ふたたび、「戦時下を思え」 夕方の5時半過ぎ、徹はスーパー「モリダクサン」の方に向かいながら思う。いつもなら一人でテレビを見ている時間帯だ。テレビといっても特に自分が見たい番組を見るわけではない。 ただ、コーヒーを飲みながら、ぼんやりとニュ…

「闇が滲む朝に」🐑章第15回「家族の冬風には、冗談も笑っていられないなあ」

すれ違いの増えた家族 徹が図書館を出る頃には午後4時を過ぎていた。そのまま、「ラッキー園」に戻り駐輪場のバイク置き場にいく。徹はいつも「ラッキー園」まで50㏄のバイクで通っているのだ。 ヘルメットをかぶりながら、徹はついさっきに会った春香さん…

闇が滲む朝に」🐑 章第14回「忘我の時、全ては満たされると、春香さんは笑った」

プライドが邪魔するとマイナス 徹には図書館館内の喫茶店で、皿やコップを洗う音が聞こえてくる。静粛の中の図書館で、ここだけは少し違う雰囲気を醸し出している。 正面に座る春香さんはコーヒーを飲みほした。 「コーヒー、もう一杯、飲もうか」「自分はま…

「闇が滲む朝に」🐑 章第13回「辛い時は戦時下を思え、と春香さんは言った」

図書館であの人に再会「初心・・・・大事だよなあ、やっぱ」 徹は控室の壁に貼ってある「初心忘るべからず」の言葉を頭の中で反芻しながら「ラッキー園」の外に出た。 午後3時過ぎ、冬の空は晴れているとはいえ、どこかグレーの色合いを漂わせつつあった。…

「闇が滲む朝に」🐑 章 第12回「絶望するなかれ。今が大事よ。身体が動けば何でもできる」

身体が動かないと苦痛になる仕事 徹は目を覚ますと、ずずっと椅子からずれ落ちそうになった。な、なんだ、今の夢は・・・。そのまま椅子に座ったままで、ぼおおっとしていた。いつもゴミの回収をし終わるのが午後2時過ぎだから、終業時間の午後3時までは1…

「闇が滲む朝に」🐑 章 第11回 「夢をバクに食べられたい」

新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い申し上げます。 令和2年 元旦 天野響一 五十六は一体、何者なんだ 徹は目の前で何が起こったのか分からなかった。一瞬、自分はかまいたちに切られたのではないか、顔面の左ほおに強烈な痛みを感…