Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

「闇が滲む朝に」🐑章 第17回「えっ?スーパーで偶然に会った人が」

夕方のスーパーで発見
 徹の妻・多恵子が働くスーパー「モリダクサン」は1階が食品売り場で2階には衣類や日用雑貨を中心に販売している。店舗によって面積や形態も違うスーパーだが、「モリダクサン」は大型の物とは違い食品に特化した店舗だ。
 だから平日とはいえ、もちろん夕方は夕飯用の買い物をする主婦たちで混んでいる。
 
 店内には魚類を販売する店員の大きな声が響いている。
「さああ、らっしゃい、らっしゃい」という、男の喉の奥から出る、あのだみ声のような大きな声だ。この声は、どんなに時代が変わっても、スーパーではずっとなくなったことがないんだろうと徹は思う。そう、いつの時代もずっとなくならないものはあるんだよ。
 
 徹はコンビニエンスストアには、今も昼食を買いによく行く方だが、スーパーはあまり行ったことがなかった。食事は多恵子が作るから、買い物も多恵子が一人で行くことがほとんどだった。
 

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店内で偶然に会った人に驚く
 野菜売り場を通り過ぎたところで、徹の目の前に「ラッキー園」のマイ子が笑いながら立っていた。
「え?・・・・・・」
 徹は驚いた。
 
「あれ、森木さん、お買い物ですか」
 マイ子は買い物かごを入れたカートを持っている。
「こ、こんばんは」
「ここにはよく、いらっしゃるの?」
 マイ子が興味津々の顔つきで聞いてくる。
 
「え?いや、ちょっと・・・・」
 徹は妻に会いにきたとは言えないでいた。
「ここ、結構、商品もいいし、高くないし、いいお店だから」
 マイ子は目の前のブロッコリーを手にした。
 
「そうですか」
 つられて徹もブロッコリーが並べられている棚を見る。
「主人は肉が好きだから、どうしても野菜も食べるようにしないと」
 そう話すマイ子の買い物かごにはニンジンやネギ、ホウレンソウなどの野菜が入っている。

 

人は見かけによらない
「片岡さん、この近くにお住まいですか」
 徹が野菜売り場の傍らに積まれている買い物かごを持った。
「そう、すぐそこのマンションよ。3LDKの」
 徹はマイ子は独身だろうと思っていた。
 
「ご主人も施設で働いているん・・・・ですか」
 徹は自分で言いながら、あまり聞いてはいけないことを口にしてしまったと思った。
 男が夕方のこんな時間にスーパーをうろつき、しかも偶然に知り合いの女性と思わず会い気持ちがうわずいてしまったのだ。
 
「・・・・いえいえ、中学の先生よ。主人は」
 意外なマイ子の言葉に徹は驚いた。
 マイ子は既婚で、しかも夫は中学の教師・・・・・。
 ほんまかいな、人は全く見かけによらないなああ。

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