Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

「闇が滲む朝に」🐑 章 第12回「絶望するなかれ。今が大事よ。身体が動けば何でもできる」

身体が動かないと苦痛になる仕事
 徹は目を覚ますと、ずずっと椅子からずれ落ちそうになった。な、なんだ、今の夢は・・・。そのまま椅子に座ったままで、ぼおおっとしていた。いつもゴミの回収をし終わるのが午後2時過ぎだから、終業時間の午後3時までは1時間ほどの余裕ができるようになっていた。
 
 本来なら、施設内を見回って汚れているところがないか確認すべきなのだが、そこまで徹は仕事熱心ではない。一般的には1時間も余裕のある現場などないに等しい。しかし、ここはなぜか時間的に余裕があった。ま、それは徹の仕事の様子を見なければ、どんな感じか分からないという会社側の思惑でもあった。ま、信じられていないのよ。
 
 他の女性二人はしっかりと業務をこなす方だ。が、実は男性でしかも、それなりの大学を出て、徹のような正業に就いきていてある程度の年齢に達している者には、身体が動ない人間が多い。
 まだ年齢的に若かったり、継続して何かスポーツをやっていたり、身体を動かす仕事に就いていたなら、掃除機をかけたりゴミを回収するといった基本的な清掃の仕事をこなすことは容易になるのだが。
 
 しかし、そうでない場合は、この基本的な清掃の仕事さえ苦痛になる人は意外と多い。つまり、身体が動かないから、いつの間にか、なんでこんなことやんなきゃいけないのとか考えてね、嫌になっちゃうのよ。
 

 だから、いつも身体を鍛えることは大事ね。いつ、何が起こるかわからないからね。失業したって、身体さえ動けばなんでもできるんよ。絶望してる暇なんかないからね。何やったっても生きていければいいんよ。今しかないんやから。そう今が大事なんよ。切に生きるってやつよ。
 

f:id:musashimankun:20200105110123j:plain



今に生きる生活密着の女性は強い
 話は逸れたけど、例えばこれが事務的な仕事に就いてきた人の場合、徹以上に動きが鈍くなる。清掃の基本は肉体労働だから、あくまで基本は身体なのだ。身体は正直だから、実は掃除がけやゴミの回収など簡単、誰でもできるなどとあなどると怪我をしたりして結局、この仕事は無理・・・・という結論にもなりかねないのだ。
 
 それよりも、清掃に対して違和感や自尊心もそれほど強くなく、もともと生活に密着した生き方をしている女性の方がスムーズに清掃の仕事をこなすのよ。だから、主婦や女性も多いわけ、この仕事。生活の糧にならないことはやらないのが女性だから。夢が大事だのといわず生活が大事だと言い切るから生き方にあまり、無駄もないしね。
 
初心忘るべからず
 徹は営業の仕事で外回りをしていたとはいえ並み以下の成績であったから、清掃の仕事に就いてもシンドイと思うことが多かった。それが、いわゆる仕事をさぼるという行動につながっていったのだった。自分でもそれはよくないことだ、いつかは明子や伸江に居眠りがみつかってしまうのではないかという恐れが、徹に脅迫観念を植えさせ変な夢を見させたのである。
 
 「いけない、いけない」徹は独り言をいいながら椅子から立ち上がると、壁の時計を確認した。午後2時59分を過ぎようとしている。徹の目に「初心忘るべからず」の標語が飛び込んでくる。そう、真面目に仕事をすることを忘れてはいけないのだ。

f:id:musashimankun:20200105110217j:plain