Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

「闇が滲む朝に」🐑章 第16回「一日、一日を精一杯に生きるということ」

ふたたび、「戦時下を思え」
 夕方の5時半過ぎ、徹はスーパー「モリダクサン」の方に向かいながら思う。いつもなら一人でテレビを見ている時間帯だ。テレビといっても特に自分が見たい番組を見るわけではない。
 
 ただ、コーヒーを飲みながら、ぼんやりとニュースを見る機会が多かった。最近では阪神・淡路大震災のニュースを覚えていた。
 
「辛い時は戦時下を思え・・・・」
 また春香さんの言葉が徹の脳裏をよぎった。
 大きな震災はまさに戦争状態と変わらないだろうと徹は思う。多くの人が犠牲になるのだ。本当に被災した人たちは生きるか死ぬかを、経験するのだから。
 
震災国・日本で生きるということ
 阪神・淡路大震災が発生して25年が経過した…。そういえば東日本大震災も発生してから12年が過ぎている。日本では東北で大きな地震が発生して以降も、毎日に全国で地震のない日はないし、大きな災害も後を絶たない。ここ数年は夏になると大きな台風や水害も発生して多くの人たちが死亡している。
 
 確かに日本が戦争をしていた時代や、広島や長崎に原子爆弾を落とされた時代と比較すれば平和ではある。しかし、今は中東のように武力による戦争はないが、災害で悲惨な状況に陥る可能性は多々ある。何よりも関東大震災のことは誰もが忘れられないことだろう。原子爆弾も大きな地震も二度あることは三度ある、にはならないでほしいのだ。
 

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毎日、一日一日を精一杯に
 阪神・淡路大震災のあった年は徹が29歳の年だった。
 独身でまだ、希望を胸に以前に働いていた会社で、朝早くから夜遅くまで仕事をしていた時期だ。今はリストラの流れの中で、自分にとって柱となっていた大切な仕事は失ったけど、新たに清掃の仕事を始めて何とかこうして普通に生活できている。
 もちろん少々の蓄えがあるからだが、これからの生活費のことや、妻の多恵子と息子の和樹のことは頭から離れたことがない。
 
 もしかしたら、毎日、薄い氷の上を歩くような状況の中で自分たちは生活しているのかも知れない。いつ、どうなるか分からないのだ。そうであればこそ、あーだこーだ悩んでいないで、毎日、一日一日を大切に行動し、精一杯に生きなければいけないんだなあ・・・。
 そんなことを考えながら徹は、スーパー「モリダクサン」の中に入った。

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