Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

Novel「闇が滲む朝に」第☆章11回「花言葉は幸福と、人間技を超えたプロレスの力」

片山は「鈴音」の4階「なでしこ」で良子に業務連絡表を渡した。いつも仕事が終わり次第、良子にサインしてもらうのだ。この部屋は主に良子が仕事をする料亭の事務所になっていた。良子の座る机にはパソコンがおかれ、周りには本が数冊、並べられている。そ…

Novel「闇が滲む朝に」第☆章10回「辛い時はジョークで笑いながら乗り越える」

鶴子は清掃から休憩所のある倉庫に戻ると、片山に「鈴音」三階の「もみじの部屋」前の洗面が詰まりかけていることを告げた。洗面の詰まりなどすぐに改善するのだけど、通常の仕事では、あまり発生しない仕事が入った場合、片山はジョークを言って自分を奮起…

Novel「闇が滲む朝に」第☆章9回「この宇宙の片隅で生きている 一瞬の偶然と奇跡について」

片山は料亭に外に出ると植栽の水撒きを始めた。カエデの木は夏でも緑の葉を青々とつけている。長いホースの先を全開にして勢いよく水を撒く。暑い空気が一瞬、涼しい風に変わる。そういえば、人間はこの水がなければ生きていけない。日本は四方を海水に囲ま…

Novel「闇が滲む朝に」第☆章8回「明日、世界が終わっても、今日、僕はリンゴの木を植える」

片山は「鈴音」の一階に戻ると、いつものように大きな花瓶の花に気づいた。この花瓶に入れられたバラやヒマワリなどの花や、ビルの植栽が自分に話しかけていることを感じることがあるのだ。同様に片山は元気になるリンゴが好きで毎日、食べるが、きっかけは…

Novel「闇が滲む朝に」第★章7回「ええいっ!危険な暑さにバッドウォーターマラソンを意識も・・」

片山二郎は「鈴音」の洗面の清掃を終えると料亭の外に出た。異常な暑さが襲う。最高気温が35度と発表される日が続く毎日に、重い疲労を感じる。常日頃から毎日の肉体労働生活をトレーニングと考えている片山は、こんな時にアメリカのカリフォリニアで開催さ…

Novel「闇が滲む朝に」第★章6回「今日も元気だしていきましょう」

片山二郎は「鈴音」の洗面の清掃を終えると、一階のお客の予約状況が記してあるボードをタオルで吹き始めた。そこに女将の武田良子が出勤してきた。Vネックの深緑色のTシャツに白いパンツ、カーキ色のショルダーバッグというラフな格好だ。いつも通りに挨拶…

Novel「闇が滲む朝に」第★章5回「暑さと疲労と不安で、おろおろしても」

片山二郎は鶴子との世間話を終えると「鈴音」のエレベーターを押し4階に上がる。ここで洗面所の清掃をするのだ。仕事は簡単だから誰でもできる。そんな誰でもできる仕事で片山は生活しているのだ。時折、疲労からむなしくなることもある。そんな時にふと思…

Novel「闇が滲む朝に」第★章4回「暑さにも、雨にも、風にも負けない力」  

片山二郎が「鈴音」の給湯室の清掃を始めようと、物置き場から上の階に上がろうとした時、トイレを清掃する吉見鶴子が入ってきた。鶴子は息子と娘を持つシングルマザーだ。今年で65歳になる。新潟出身だが大阪に住んでいたことがあり、会話はほとんど関西弁…

 Novel「闇が滲む朝に」第★章3回「リストラされた平のしゃべりが止まらない」

片山二郎は料亭「鈴音」で先輩の鈴木平を待った。平はパソコン関係の会社を2年前にリストラになってから清掃の仕事を始めた。話好きの平はさっそく、昨日のボクシング世界戦のことを話ひ出す。平はいつも話をしだす。話し出すと止まらない。そんな平と話し…

Novel「闇が滲む朝に」第★章2回「下町の料亭で働くジーンズ姿の女将」

片山二郎は早朝のキタキツネビルでの仕事を終えると、次の仕事場である下町の高級料亭「鈴音」に向かった。下町にある料亭は4階建ての近代的なビルで、ジーンズ姿で通う女将が仕切る。ここで片山は昼過ぎまで清掃の仕事に就いている。建物は近代的だが、店…

Novel「闇が滲む朝に 第★章1回『踏まれても踏まれても、道のように平然と』」

都内で早朝から仕事に就く片山二郎の平日の朝は早い。午前3時には起床し4時には自宅を出る。帰宅は午後8時30分だから、平日はほとんど家にはいない。都内のキタキツネビルで仕事を終えると10時からは現代的な作りの料亭で清掃の仕事に就く。今年も暑くな…