Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

「闇が滲む朝に」🐑 章 第4回「渡り鳥のように飛び続けることができるか」

渡り鳥の飛来に感謝する
 徹はカートから落ち葉の入った90ミリリットルのビニール袋を取り出し、高齢者施設「ラッキー園」の庭の隅にある横用具入れ隣のゴミ収集倉庫に置いた。
 ピーッ、ピピピ、どこからかツグミの鳴き声が耳に届く。
 目の前に広がる青い空と黄色い葉が広がる庭を眺めながら、ツグミはなぜ、日本に飛んでくるのかと考えたりする。ま、暇なんだ、ようは。 
 
 そういえば、ツグミに限らず、決まって冬になると日本に飛来する渡り鳥たちは多い。
 徹は若い頃に新潟市内の佐潟でハクチョウを見たことがある。偶然に出かけた湖だった。このハクチョウは冬になるとシベリアやアイスランドから飛来するのだ。ツグミは確か中国あたりからだった。
 

 なぜ、渡り鳥は長い距離を旅することができるのだろう。太陽や月、地場のエネルギーの変化を敏感に察知して移動するらしい。
 今年もツグミやハクチョウが変わらずに、日本に来てくれることに感謝しなきゃいけないのかも知れない。地球が完全には壊れていないということなのだ。
 
 まだ、社会に出て間もない頃だった。徹は休みの日に冬の新潟にふと旅した。まだ、結婚もしていなかったし、気分転換に新潟なら日帰りできると出かけたのだった。当時に考えていた渡り鳥のことを、長い間、勤めていた会社を辞め、清掃の仕事を始めたこの年になって思い出すなんて。なんか、おまえ、メランコリーな気分で疲れてんじゃないの?ふと我に返った。
 
 なんで、メランコリーなんだよ。考えてみたら、あの長い距離を飛び続ける渡り鳥たちのエネルギーは凄いんだよ。やっぱり。たいしたもんだよ。そんなことできるかい。ただ、地べたを、あっちへ行ったり来たり、歩くことしかできない人間にさ。

f:id:musashimankun:20191208131017j:plain

地震でおこる雪崩現象が恐い 

 東京なんか、少子化どころか、まだまだ人口は増えるらしいからね。えー!?だね。これから数年内に大震災が発生すると予想されているのに。結局、首都の分散化など、どの政治家も実行できず(主張者は一部にはいたか)。冬は雪が3センチ、積もっただけでパニックになるっていうのに。

 

 地震が発生したら、逃げようとする人々でなだれ化し、多くの人が死ぬといわれているのに。こんな人口過多の首都を作って、それこそ鳥たちの方が火災さえ受けなければ、助かる可能性がある。つまり東京人も鳥と同じように飛べる羽根か人間用ドローンでも持たないと、大きな地震の発生時には生きてはいけないのだ。
 徹はそんなことを考えながら施設の中に入ると、1階の奥にある休憩所の方に向かった。

f:id:musashimankun:20191208131051j:plain