「闇が滲む朝に」🐑章 第33回「イノシシと闘ったさ。野良仕事も毎日が命懸けっさ」
ジョイは綱なしで外に出さねっと
「ただいま」
徹たちが京子と話しているところに、ヒゲさんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
京子は笑顔でヒゲさんを迎えた。
「今日は早いわね」
「ああ。お客さん、あんまり待たせちゃいけねっから」
「おかえりなさい」
京子からヒゲさんのことを聞いた徹とはなえは改めて見直すように、ヒゲさんに挨拶した。
「すみません。ジョイだけは毎日、朝晩、外に連れていかねっど。運動不足になるっけ。コーシー、持ってきて。それともお茶がいいですか」
ヒゲさんはテーブルの上の、徹の空になったコーヒーカップを眺めた。
クマとかイノシシも出るさ
「おかわりがいいですか」
京子が二人に聞く。
「いえいえ、もうお構いなく」
徹が頷きながらはなえの方を向いた。
「ええ、もう。いただきましたから」
はなえが頷いた。
「はなえさんはお茶だね。で、こちらはコーシーだね」
ヒゲさんが徹の方を向いた。
「すみません・・・・じゃあ、もう一杯いただきます」
徹が京子に頭を下げた。
「どうですか。すずかでいいでしょ。この辺は」
「ええ、本当に静かですね。ジョイはいつも綱はつけないで散歩に出るんですか」
徹がジョイとヒゲさんのツーショットの写真を見る。
「ああ、その方がジョイもええ。俺についてくるさ。でもね、ここは気をつけなきゃいけねえことも多いさ」
ヒゲさんが一人用のソファーに座る。
「クマとかイノシシ、最近はシカもしょっちゅう出るさ。前はこんなことあんまりなかったんだけども」
京子がコーヒーを運んできた。ヒゲさんが徹に勧める。
健康が一番、でも毎日が命懸けっさ
「ありがとうございます。今は殺人ウィルスで世界中が騒いでいるし、都会を離れても、本当に今はどこでも生活するのが大変になりました。見える敵だけでなく、見えない敵とも闘わなきゃいけないし・・・・」
徹がコーヒーを飲む。
「うんだ。イノシシくらいなら。何とかなるけども。クマさ来たら・・・大変だ。いっぺんで殺されるさ」
ヒゲさんが腕を組んだ。
「ほんとに大変ですね・・・・大丈夫ですか」
徹が聞いた。
「イノシシとはなんどか、取っ組み合いやったことあったさ。野良仕事やってた時に、突然に後ろから来たから、びっくりしたけども。その前にジョイが急に吠え出したから分かったさ」
「そうですか」
「ジョイがいなきゃ、また、どうなってたか分かんねぇ。なあ」
ヒゲさんが京子の方を振り向いた。
「本当にジョイが助けたようなもんです。今は本当に健康な身体あっての生活ですからね」
一番、入口に近い方のソファーに座る京子が笑みを返した。
「本当さ。何より健康でなきゃな。ま、何やってもおんなじだけど。野良仕事も漁業と同じように、毎日が命懸けだからさ」
ヒゲさんがコーヒーをすすりながら、ゆっくりと飲んだ。
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