「闇が滲む朝に」🐑章 第34回「なんてこたあ、ねえっさ。負けねっさ」
なんてこたあ、ねえっさ
「のど自慢、大丈夫ですかね」
徹がヒゲさんの顔を見る。
「やるっさ。どんなことがあっても『もとずろう温泉』のずんいちろ社長は、どんな状況になってもやるっさ。この前もあの温泉は完全防備してるから、ウィルスなんか吹き飛ばすって言ってっさ。参加者もずんいちろ社長のこと好きだから、いつも通りやるっさ。なんてこたあ、ねえっさ。フェイトフェイト」
「ファイト、でしょ」
京子がヒゲさんの話に口を挟んだ。
「うん。フェイト?。そう。ファイト、ファイトだよ」
ヒゲさんは言いながら笑った。
「はなえさんは、あまりご無理さならない方が」
京子がはなえの方を向いた。
「私は温泉に入って、食事して寝ます。のど自慢なんかには出ません」
はなえがお茶を飲んだ。
応接室の本棚に並べられた本
「結構、本も多いですね」
徹が応接間の壁際にぎっしり並べられた本を眺めた。壁に本棚が組み込まれていて移動できるようになっている。
「こう見えても読書家なんです。この人・・・・」
京子が本棚を見ながらポツリと言った。
「いや、いや、京子の読む本ばっかだから」
ヒゲさんが珍しく照れた様子を見せる。
「ほとんど、あなたの本ですよ」
「ま、夜は暇な時もあるっさ」
ヒゲさんが目をつぶりながら頭をかいた。
「最近はゲームや映画は、みんなプレーしたり観たりするようですが、以前と比べると、なかなか本は読まれなくなっちゃったって聞いたりしますが」
徹も本棚を見た。
アスリートには読書家が多い
「でもアスリートには結構、本が好きな人も多いらしいですよ。ボクシングの世界ミドル級チャンピオンの村井さんなんかも読書家で知られていますし、サッカー選手や陸上選手なんかにも読書家は多いですね。主人も元はスポーツマンですし」
京子がいくぶん弾んだ声で言った。
「自分自身のことをじっくり考えたりするにはね。やっぱ、常に自分を鼓舞し省みながら、試合に挑むことが多いからでしょうね。特にスポーツの世界は厳しいですから」
徹らしからぬ発言にはなえが少し驚いた。
「私も本は好きだけど、ヒゲさんは何が好きですか」
今度ははなえが聞く。
「なんでも読むっさ。仕事関係はもちろんだけどさ、経営関係、経済、精神世界からノンフィクション、小説、ジャンルは問わないっさ。最近は電子書籍もどんどん増えているから、スマホでも、どこでも読めるさ。便利になったさ」
ヒゲさんは少しぶっきらぼうに答えた。
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