Novel life~musashimankun’s blog~

漫画「きっと、いいことあるさ~君が住む街で~」を週刊で連載しています。

「闇が滲む朝に」🐑 章 第10回「ぶうん!! ん?突然の五十六の足蹴りに怯む」

中華屋の客はほとんどが建設作業員
 「中華屋・ぶんぺい」はいつの間にか満席になった。客のほとんどが建設作業員だ。
 騒がしい中で徹は「ちゃんぽん麺」をすすりながら目を閉じた。熱いのだ。

「弟さん、クリーンモリカミで働いてどれくらいになるんですか」
 徹は五十六の顔を見た。
 「七八か、さあ、どれくらいかなあ。結構、長いんじゃねえの。『キタキツネビル』で働いているよ」
 五十六がぐびっとビールを飲む。
 
 「『キタキツネビル』には面接にいきました」
 徹が水を飲む。
 「そうか。でかいビルだよな。そこでは仕事してないのか」
 五十六がくみ子に手招きすると空のビールグラスを渡した。
 「ええ、面接で『ラッキー園』に行くように言われました」
 徹が蓮華でスープを飲む。
 
 「そこの高齢者施設だろ」
 五十六が徹を刺すような目つきで眺める。
 「ええ・・・・」
 徹は目をそらすようにラーメン鉢の麺をすすった。

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 おもしろいか、仕事
 「どうだ」
 「仕事ですか。ええ、まあまあです」
 「おもしろいか」
 くみ子が五十六にビールを渡す。
 「くみちゃん、水、貰えますか」
 徹がコップを渡しながら遠慮がちに言った。
 
 「どうでしょうか・・・・清掃ですから」
 徹が少し間をおいて答えた。
 「どれくらいになる?」
 五十六が大きく息を吐いた。
 「三か月くらいです」
 「まだ、はじめたばかりか」
 「毎日、何かと・・・・・しぼられてますよ」
 徹がくみ子から水の入ったコップを受けとる。
 
 「しゃああないな」
 五十六は言うと席を立ち、レジ前に立つくみ子に2000円を渡した。
 「釣りはいいよ」
 「あ、そうですか。ありがとうございます」
 
いきなりの、五十六の蹴りに怯む
 続いて徹が「ちゃんぽん麺」代の550円を渡した。
 「ごちそうさま」
 「いつもありがとうございます」
 「ありがとね」
 厨房の奥から文平とゆう子が笑顔を見せた。
 「ごちそうさま」
 「中華屋・ぶんぺい」の戸を閉めると徹は五十六に続いて外に出た。
 
 ぶうん!!いきなり、徹の目の前を急に重い風が吹いた。一瞬、何かと徹は怯んだ。
 五十六が足蹴りを食らわそうとしたのだ。あと、ほんの数センチで顔面に当たる寸前だった。
 「あまかねえよ・・・・」
 五十六は爪楊枝をくわえたまま言った。
 「・・・・・・な、なんだよ」
 徹は驚いて五十六の背中を見たまま茫然と立ちすくんだ。

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